交通事故の主な賠償項目(人身事故)
交通事故(人身事故)の主な賠償項目について,ご説明します。
重次法律事務所 弁護士 重次直樹
症状固定
ここで重要なのが,「症状固定」という概念です。
症状固定とは,治療を続けても大きな改善が見られず,治療効果が見られない状態を言います。
症状固定前:①治療費,②休業損害,③入通院慰謝料
この症状固定より前の段階では,主な損害賠償の項目は,
①治療費,②休業損害,③入通院慰謝料となります。
①治療費
医師が診療報酬明細書で金額を明示しますので,カットされにくい項目です。個室代や,整骨院・接骨院等の費用は注意が必要な場合があります。また,症状固定の時期(治療期間の終期)が争われることがあります。
②休業損害
勤務先の休業損害証明書が出されれば,不当のカットされる心配はありません。
主婦でも賃金センサス評価により,休業損害が得られる点は留意が必要です。
個人事業主や役員については,評価が難しい問題が出てきます。
③入通院慰謝料(傷害慰謝料)
入通院慰謝料は,赤い本,青い本,大阪算定基準書などに,入院期間と通院期間(※)のマトリクスで基準が提示されています。
大阪地裁算定基準の一部は,下記表・グラフの通りです。たとえば,
通院期間が6か月の場合,120万円が基準になります(重症基準なら150万円,他覚所見のないムチウチは3分の2(80万円)が基準になります。
一般の方には分からない金額なので,多くの場合,保険会社は弁護士基準よりずっと少ない金額を提示します。
自賠責基準は1日4200円が限度であり,
通院90日なら37万8千円となります(大阪通常基準3か月の3分の1以下)
※
通院期間:実際に通院した日数ではなく,
治療開始日から最終治療日までの期間,ただし,
実通院日数が少ない場合には,実日数の3.5倍と期間とを比較して,短い方を通院期間とする場合があります。
当初の1か月は,通院で27万円,入院で53万円ですが,長期化するほど,1か月あたりの慰謝料増額幅が小さくなっていきます。
症状固定後:④後遺障害慰謝料,⑤後遺障害逸失利益
症状固定後は,後遺障害診断書を作成してもらい,等級認定を行う
症状固定と判断されると,その時点の状態で残った
後遺障害について等級の認定を行い,残った後遺障害や認定された等級に応じて,④後遺障害の慰謝料と,⑤後遺障害の逸失利益が得られます。
逸失利益というのは,交通事故がなく,後遺障害が残らなかった場合には,働いて稼ぐことが出来たが,
交通事故による後遺障害で労働能力が低下して得られなくなった利益を言います。
等級によって,賠償額が大きく変わりますので,正当な後遺障害の等級認定を受けることは,極めて重要です。
④後遺障害慰謝料
等級ごとに基準値が定められています。
自賠責やこれに近い保険会社の基準よりも,弁護士・裁判基準の方が,大幅に高額となります。
赤い本,青い本,大阪地裁算定基準は,ほぼ同じですが,若干異なります。
(左メモリ:万円,下メモリの右端2つは要介護2級・1級)
⑤後遺障害逸失利益
基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間×ライプニッツ係数で計算します。
基礎収入は前年の所得で計算するのが原則です。主婦の場合は,賃金センサスで評価します。
労働能力の喪失率は,等級ごとに基準が定められています(下グラフ・表)。
喪失期間は,症状固定から
67歳までの年数か,平均余命の半分の年数の,長い方が用いられるのが一般です。ただし,ムチ打ちの場合,12級では5~10年(多くの場合10年),14級では2~5年(多くの場合5年)に限定されます。
法定利率による中間利息の割り戻し計算があります(
ライプニッツ係数)。
親切丁寧にご対応致します。お気軽にご相談下さい。