死亡事故の逸失利益1(労働逸失利益)
※死亡逸失利益の自賠責基準については,以下をご参照ください。
交通事故の被害者の方が,死亡しなければその後の就労で得ることができたであろう収入を,死亡逸失利益(労働逸失利益)として損害として認められます。
後遺障害でも逸失利益はありますが(後遺障害逸失利益),死亡事故では,①被害者の収入が年金を含めて100%無くなる点(後遺障害では年金はなくならない),②収入がなくなるが生活費の支出もなくなるので,生活費分を控除すること,の2点が大きな違いです。 |
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死亡事故の労働逸失利益の算出方法は以下の通りになります。(年金逸失利益については,対象者は限られ,複雑な面もあり,現時点ではサイトでの説明を省略します)
年金受給者を除き,死亡逸失利益=労働逸失利益となるのが一般です。
金額も大きく,重要な損害賠償項目になります。
死亡慰謝料については,以下をご参照ください。
死亡事故の賠償項目については,以下をご参照ください。
●死亡事故の労働逸失利益の算出方法
基礎収入×(1-生活控除率)×(就労可能年数に対するライプニッツ係数)
1 逸失利益の算出で重要な基礎収入の算出
裁判実務上は,平成11年の東京・大阪・名古屋各地方裁判所交通専門部による「三庁共同提言」によっています。被害者の類型ごとに,基礎収入について基本的な考え方を説明します。
①給与所得者
事故前年の年収が基礎収入となります。年収を証明する証拠は,源泉徴収票や所得証明書となります。
②事業所得者
事故前年の申告所得額が基礎収入となります。確定申告書や添付書類の控えにより証明します。場合によっては,所得証明書や課税証明書により証明することもあります。
申告所得よりも実際の所得の方が多いという主張が被害者側からなされることがありますが,より厳格な立証が要求されます。
③会社役員
事故前年の役員報酬が基礎収入となります。役員報酬中の利益配当部分を除外するかどうかについては,死亡事案では争いがあります。
④家事従事者
専業主婦(夫)は死亡した年の賃金センサスの女性・学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入とします。パート等に従事している場合は,現実収入と賃金センサスの女性・学歴計・全年齢平均賃金の高い方を基礎収入とします。
⑤失業者
年齢,職歴,就労能力,就労意欲等から再就職の可能性が高いと認められれば,逸失利益が認められます。この場合の基礎収入は,年齢,学歴,経歴,健康状態,失業に至った理由,就労していなかった期間の長さ等を考慮し,失業前の収入を参考にしつつ,賃金センサスにより妥当な金額が認定されます。
⑥学生,生徒,幼児
死亡した年の賃金センサスの被害者の性別による学歴計・全年齢平均賃金が基礎収入となります。
⑦高齢者
65歳以上で働いていない高齢者で就労の可能性が高いことを前提に,死亡した年の賃金センサスの被害者の性別による学歴計・年齢別賃金が基礎収入となります。死亡時に年金を受給していた場合は,逸失利益として認められる年金があります。
2 生活費控除とは,被害者が生きていれば必要であった収入を得るための生活費の支出を免れることから,公平の観点から被害者の死亡後の生活費を控除するものです。支出を免れた生活費を個別に算定することは困難なので,基準化されています。大阪地方裁判所の基準では以下の通りに定められています。
2 生活費控除率
(大阪基準)
・一家の支柱及び女性 … 30%~40%
・その他 … 50%
(赤い本基準)
赤い本では,もう少し細分化された基準の記載があります。
・一家の支柱(被扶養者1名) ・・・ 40%
・一家の支柱(被扶養者2名第1準備書面) ・・・ 30%
・女性(主婦,独身,幼児等を含む) ・・・ 30%
・男性(独身,幼児等をふくむ) ・・・ 50%
・兄弟姉妹のみが相続人 ・・・ 別途考慮(上記の基準に従うとは限らない)
・年金部分 ・・・ 通常より高くする例が多い
3 就労可能年数
就労可能年数は原則,死亡時から67歳までです。被害者が高齢の場合は67歳までの年数と平均余命の2分の1の長い方を就労可能年数とします。
学生,生徒等の就労開始時期は原則18歳ですが,大学生や大学進学の可能性が高い場合は大学卒業予定時とします。
4 中間利息の控除
逸失利益は,将来,長期間にわたって得るはずの収入を一度に受給するため,中間利息を控除して算出します。中間利息の控除方法は,裁判実務上は,ライプニッツ方式(複利)によっています。
利率は法定利率によります(現在は年5%)。改正民法が施行される2020年4月1日から法定利率は3%に変更される予定ですが,施行前の事故については5%で計算されます(移行規定あり・・・417条の2・・・「事故時の法定利率」による)。
5 専門弁護士への相談が重要
死亡事故の逸失利益は金額が大きく,算出方法も複雑で,一般の方には難しい部分です。
慰謝料と共に,保険会社が裁判基準より大幅に低い金額を提示することの多い項目です。
適正な賠償金を受け取るため,是非,交通事故に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
(写真左より)
事務所代表弁護士 重次直樹, 相談室, ジオグランデ梅田(NU+の上層部)
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