交通死亡事故の慰謝料1:一家の支柱
★ 一家の支柱以外を含め,こちらもご覧ください。
「一家の支柱」が死亡した場合の,交通死亡事故の慰謝料については,一応,以下の基準が各書籍に記載されています。
・赤い本
2800万円
・青い本
2700万円~3100万円
・大阪地裁算定基準(※)
2800万円
※大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第3版)
(大阪地裁民事交通訴訟研究会編著,判例タイムズ社)
「一家の支柱」とは,
当該被害者の世帯が,主として被害者の収入によって生計を維持している場合をいいます(青い本,大阪地裁算定基準)。
※※青い本 「交通事故損害額算定基準 実務運用と解説」(日弁連交通事故相談センター)
★交通死亡事故の賠償項目については,以下のサイトもご参照ください。
死亡慰謝料については,
赤い本2016(平成28年)版の下巻(講演録編)の97頁以下に,
「裁判例における死亡・後遺症慰謝料の認定基準」という記事が掲載され,98頁に一家の支柱について,裁判例の検討結果が公表されています。
(赤い本(2018)下巻98頁図1を基に,当事務所で作成)
上の図表のとおり,一家の支柱が死亡した場合の慰謝料については,2800万円に集中しており,赤い本,大阪地裁算定基準の2800万円は正当に見えます。また,青い本の2700万円~3100万円をはみ出る判決は,3100万円超が3件,2700万円未満が3件のみであり,青い本の基準も正当に見えます。
もっとも,
実際には,原告(被害者)の弁護士が,家族のどの範囲までの慰謝料を主張するか,によって,金額が変わっている可能性があります。
以下は,当事務所が交通事故民事裁判例集から,平成28年1月1日~平成28年5月25日までの死亡慰謝料を集計したものです。
上の図表のとおり,妻子や両親については,一人○○万円と認定されています。最も金額が大きい3300万円の事例(東京地裁平成28年2月9日)では,妻200万円,子2人各150万円のほか,父母各100万円が認められて,合計が3300万円になっています。
また,年齢を見ると,81歳,79際,63歳の被害者でも,2800万円,3000万円,2800万円が認められています。
年金生活者でも,
当該被害者の世帯が,主として被害者の収入によって生計を維持している場合をい,一家の支柱として,慰謝料2800万円という基準が妥当しています(81歳,63歳の男性は事故時無職)。なお,79歳の男性は,妻が働き夫は引退(主夫状態)ですが,配偶者基準に近い2510万円が認められました。
34歳,49歳という年齢では,3300万円と2800万円であり,平均3000万円を超えています。
以上を見ると,
・退職後の年金生活者でも2800万円を得られる可能性が充分にある
・2800万円を超える例も少なくない
ということが言えると考えます。
加害者側の保険会社は,退職後の年金生活者などについて,「一家の支柱ではない」として低い金額の死亡慰謝料を主張することがありますが,実際の裁判例は上記の通りです。年金生活者でも,主たる家計の担い手である限り,一家の支柱として,2800万円の死亡慰謝料を主張して問題ないと考えます。
(分析/文責:弁護士法人 大阪弁護士事務所 代表 弁護士 重次直樹)
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