この分析は,
「子供たちが成長して独立したり,ほぼ自立しているという年齢層の被害者」について,「母親・配偶者」の典型的な事例とは断定しにくい,という問題意識をもって行われた経緯があります。
結果は,
死亡慰謝料が旧基準の2400万円,新基準の2500万円より低くなるのは,70歳代,80歳代です。
たとえば,下の図表の赤枠の通り,
50歳代では,新基準の2500万円よりも高い死亡慰謝料(平均2667万円)が認められています。
(50歳代の死亡慰謝料,赤い本H28版下巻,99頁)
2400万円(2件),2450万円(1件),2500万円(3件),2600万円(1件),2650万円(1件),2750万円(1件),3000万円(2件),3250万円(1件),
平均2667万円
60歳代では,60歳代前半では2500万円超が5件,2500万円が1件,2500万円未満が3件で,2500万円を上回っています。60歳代後半では,2500万円1件,2500万円超が1件,2500万円未満が4件(うち,2400万円2件)であり,平均では,旧基準の2400万円は上回りますが,新基準の2500万円には届きません。
以上のとおり,子供が独立して自立する年齢になっても,直ぐに母親・配偶者の死亡慰謝料が基準を下回るのではなく,
2500万円を下回るのが60歳代後半,2400万円を下回るのは70歳代以降,というのが,赤い本(28年)下巻における裁判例分析の結果です。
加害者側の保険会社は,子供が独立する年齢になると直ぐに,母親・配偶者基準の適用排除を主張することがありますが,実際の裁判例は上記の通りですので,60歳代前半までは,2500万円基準超,60歳代後半でも2400万円以上の金額を主張して問題ないと考えます。
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(分析/文責:弁護士法人 大阪弁護士事務所 代表 弁護士 重次直樹)