交通死亡事故の逸失利益2:自賠責保険の基準

死亡逸失利益の裁判基準については,以下のサイトもご参照ください。
  ○ 死亡事故の逸失利益1(労働逸失利益)

低所得者では,賃金センサスを利用可能な自賠責基準>裁判基準の場合も少なくない


逸失利益は,低所得者の場合などで,自賠責保険基準>裁判・弁護士基準となることが少なくない項目です。
これは,死亡逸失利益でのみならず,後遺障害逸失利益でも同様です。

自賠責保険では,逸失利益の計算において,①事故前の年間収入額,②死亡時の年齢に対応する年齢別平均給与額(別表Ⅳ,平成12年賃金センサスによる)の年相当額,高い方を基礎に算定するため,低所得者の場合,自賠責保険基準>裁判・弁護士基準となりやすい傾向があります。

賠償総額では,結局,裁判基準の方が高くなるのが一般的

ただし,他の項目,特に慰謝料で裁判・弁護士基準が高い上,自賠責保険は上限が設けられているため(死亡の場合は3000万円が自賠責の上限),被害者の過失割合が高い事故を除き,合計額では結局,裁判・弁護士基準の方が高くなるのが一般です。

死亡逸失利益に関する自賠責基準の概要


(1)年金受給者以外
年間収入額(又は年相当額)×(1-生活費控除率)×死亡時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数

(2)年金受給者・・・ア+イの合計額
ア 就労可能年数分
年間収入額(又は年相当額)×(1-生活費控除率)×死亡時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数

イ 就労可能年数~平均余命分
年金年額×(1-生活費控除率)×(死亡時の年齢における平均余命のラ係数-同就労可能年数のラ係数)

(3)生活費控除率
・被扶養者がいる場合 ・・・ 35%
・被扶養者がいない場合 ・・・ 50%
  ※被扶養者は父母・配偶者・子に限られ,弟・妹・いとこ・甥・姪などを扶養している場合を含みません。

(4) 年収評価1:年金受給者以外
①有職者(原則)
  事故前1年間の収入額と,
(死亡時年齢の)年齢別平均給与額(別表Ⅳ)の年相当額の,高い方
②35歳未満の有職者(例外)
  事故前1年の収入額と,全年齢平均給与額の年相当額,年齢別平均給与額の年相当額の,高い額
③退職後1年未経過の失業者(定年退職は除く)
  「退職前1年間の収入額」を「事故前1年の収入額」とする。
④幼児・児童・生徒・学生・家事従事者
  全年齢平均給与額の年相当額(58歳以上で年齢別平均の方が低い場合は,低い額

⑤その他,働く意思と能力を有する者
  年齢別平均給与額の年相当額,全年齢平均給与額の年相当額の低い方

(5) 年収評価2:年金受給者
①有職者(原則)
  事故前1年間の収入・年金合算額と,
(死亡時年齢の)年齢別平均給与額(別表Ⅳ)の年相当額の,高い方
②35歳未満の有職者(例外)
  事故前1年の収入・年金合算額と,全年齢平均給与額の年相当額,年齢別平均給与額の年相当額の,高い額
幼児・児童・生徒・学生・家事従事者
  全年齢平均給与額の年相当額(58歳以上で年齢別平均の方が低い場合は,低い額)と,年金年額の高い方

④その他,働く意思と能力を有する者
  年齢別平均給与額の年相当額,全年齢平均給与額の年相当額の低い方と,年金年額の高い方