30代男性
交通事故の被害者救済に熱心に取り組む整骨院の先生からの紹介
過失割合加害者:被害者=100:0
頭蓋骨骨折,脳挫傷,急性硬膜下血腫
別表第2第9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)(基準となる労働能力喪失率は35%)
なし
病院同行(医師面談),自賠責保険の被害者請求(後遺障害の等級認定手続き),示談交渉
治療費,休業損害の取得期間延長,慰謝料内金取得に加え,自賠責保険で616万円,示談成立で2900万円超,計3500万円超を取得
脳神経外科がある大病院で治療を続けていましたが,主治医は,本人にめまい,ふらつき,視野狭窄,視力減退等の自覚症状があるのに,脳に由来する症状は完治(後遺障害はない)と主張しました。
しかし,本人の自覚症状や家族の話からは,高次脳機能障害の可能性を否定できないため,日常生活状況報告書を含む高次脳機能障害用の各書類を自賠責に提出して被害者請求した結果,「本件事故に起因する脳外傷による高次脳機能障害が残存しているものと捉えられます」として,別表第2第9級10号が認定されました。
【後遺障害等級認定票】 青下線部は,医師が「神経系統の障害に関する医学的意見」書において,後遺障害が残存したことを認めず,全て「正常」「自立」「障害なし」「日常生活は問題ない」等の記載をしたことを指摘する部分。赤下線部は,「日常生活状況報告」書やその他診断書の記載を総合判断すれば,高次脳機能障害による後遺障害について,9級10号に該当する旨を記載した部分。
医師は,治すこと(治療)については,関心が強く,高度の専門知識を有しており,正にプロフェッショナルな職業の代表ですが,治せなかった後遺障害を正当に評価することには,関心が低く,正しい評価をしない場合も珍しくありません。
特に,高次脳機能障害については,大病院の脳神経外科医においても,余り知識を備えていないと感じることが珍しくありません。逆に,小さな病院でも,高次脳機能障害の支援事業に参画するなどして,高次脳機能障害に取り組む専門医の方が,詳しい場合が少なくありません。
法曹(裁判所,弁護士等)においても,必ずしも高次脳機能障害の知識が充分とは言えない場合もありますので,高次脳機能障害の疑いがある場合には,この分野の知識・経験を有する弁護士に相談・依頼することをお勧めします。ただ,1件1件が重い事案になり,訴訟となる比率も高いため,経験を有する弁護士においても,余り多数の事件を受任することは,難しい事案になります。
担当及び分析 : 弁護士 重次直樹