事業所得者の逸失利益の算定に当たって,基礎収入は,事業所得者の労務等の個人的寄与によって生み出された収益部分のみということになります。寄与率の判断要素として,裁判例は以下のような事情を考慮しています。

 ①交通事故前後の収支状況・営業状況
 たとえば,事故後に事業所得者が就労できず,事故後の収益が事故前よりも大幅に減少したり,赤字になった場合などは,事故前の事業所得者の労務等による個人的寄与が大きかったという一事情になります。
 事業所得者が休業したことによる減収分がそのまま事業所得者の寄与分と認定するのは困難です。なぜなら,家族・従業員の労務が事故前よりも加重されたり,代替労働者を雇用するなど,事業所得者の労力不足を補うための経営内容の変更がなされることが多いからです。

 ②業種形態
 事業所得者個人の特殊な技能,能力,知識,経験や個人的に培ってきた人脈等が事業経営に重要と見られる業種・形態であれば,事業所得者の寄与率は高いということになります。

 ③事業所得者の職務内容・稼働状況
 事故前の職務内容・稼働状況は,事業全体に占める事業所得者の個人的寄与の程度を判断する上で,特に重要な判断要素であると考えられています。
 事業全体の職務内容のうち,事業所得者が担当する職務が大部分を占める場合や担当する職務が事業において重要なものである場合,寄与率は高いと言えます。

 ④家族の関与の程度・給与額
 事業が零細で,家内工業的な営業形態であることが多く,家族の関与の程度は事業所得者の寄与率の判断に際して重要な判断要素となります。
 家族の労務の寄与分の認定に当たっては,専従者の給与額は参考にならず,事業全体の職務の中で家族の担当する職務内容・程度等を個別具体的に考慮し認定することになります。

 ⑤従業員の関与・給与額
 事業所得者が従業員を雇用し,従業員の給与以上の収益を上げている場合は,従業員の給与を上回る収益は事業所得者の手腕によると考えられます。つまり,事業所得者の個人的寄与分と評価されます。

 ⑥代替労働の雇用
 事業所得者が就労できず,代替労働者を雇用した場合,代替労働者の賃金相当額が事業所得者の個人的寄与分を金銭評価しする一つの事情と考えられます。

★解説等の記事一覧

●積極損害 ●消極損害 ●慰謝料
●後遺障害 ●物的損害 ●損害額の減額事由
●損害の填補 ●保険知識 ●その他

積極損害

No コンテンツ名
1  通院交通費の算定
2  治療関係費について
3  付添看護費について
4  入院雑費の算定
5  将来の介護費
6  交通事故後,被害者が別の原因で死亡した場合の将来の介護費
7  葬儀関係費
8  家屋改造費
9  将来の介護費用と介護体制の変更
10  職業付添人と近親者による介護

 

消極損害

No コンテンツ名
1  逸失利益の算定-三庁共同提言-
2  会社役員の逸失利益の算定
3  自営業者の逸失利益の算定
4  年金受給者の逸失利益
5  交通事故後,被害者が別の事故で死亡した場合の生活費控除
6  交通事故後,被害者が自殺した場合の逸失利益
7  家事従事者・主婦の逸失利益の算定
8  無職者の逸失利益
9  外国人の逸失利益
10  減収がない場合の逸失利益
11  扶養利益の喪失
12  幼児・生徒・学生の逸失利益
13  賃金センサスについて
14  死亡逸失利益と昇給
15  若年者の逸失利益
16  年金と稼働収入がある場合の生活費控除
17  事業所得者の個人的寄与
18  事業所得者の寄与率の判断要素
19  CRPSの後遺障害
20  非器質性精神障害の等級 

 

慰謝料

No コンテンツ名
1  近親者の慰謝料請求
2  加重障害の慰謝料
3  慰謝料の補完的機能
4  胎児の死産と慰謝料

 

後遺障害

No コンテンツ名
1  後遺障害による逸失利益における生活費控除
2  後遺障害による逸失利益の労働能力喪失率
3  加重障害とは?
4  障害等級表
5  むちうちの後遺障害による逸失利益
6  加重障害の逸失利益
7  外貌醜状と逸失利益
8  歯牙障害と逸失利益
9  鎖骨の変形と逸失利益
10  自動車事故対策機構法の介護料
11  併合と相当
12  脾臓喪失と労働能力の喪失
13  骨盤変形と労働能力の喪失
14  神経症状と労働能力喪失期間
15  嗅覚・味覚障害と逸失利益
16  関節機能障害の評価
17  関節の用廃
18  意識障害の程度
19  GCSによる意識障害の程度
20  高次脳機能障害のポイント
21  自賠責における高次脳機能障害
22  人身傷害保険の後遺障害認定
23  参考運動の評価
24  むちうちの後遺障害
25  非器質性精神障害
26  関節の外傷
27  後遺障害に対する異議申立て
28  高次脳機能障害の等級

 

物的損害

No コンテンツ名
1  物損の損害費目
2  車両修理費
3  評価損
4  代車料
5  買替差額
6  休車損害
7  買替費用
8  物損に関する慰謝料
9  車両損害の請求権者
10  代車使用の相当期間
11  納車直後の車両の損害
12  古い車両の時価
13  評価損の算定方法と評価基準
14  改造車の車両修理費
15  アジャスター

 

損害額の減額事由

No コンテンツ名
1  素因減額
2  被害者側の過失
3  好意同乗と損害賠償
4  非接触事故の過失相殺率
5  共同不法行為と過失相殺
6  過失相殺能力
7  自賠責保険と過失相殺
8  被用者の過失
9  配偶者の過失
10  身体的特徴と疾患
11  素因減額の主張・立証責任

 

損害の填補

No コンテンツ名
1  人身傷害保険と代位
2  交通事故と健保
3  交通事故と労災
4  損益相殺
5  損益相殺の時的範囲
6  損益相殺の主観的範囲
7  過失相殺と損益相殺の先後
8  遅延損害金と損益相殺
9  共同不法行為と自賠責保険の充当
10  労災給付と遅延損害金への充当
11  労災給付と遅延損害金への充当②
12  労災給付と損益相殺

 

保険知識

No コンテンツ名
1  運行供用者責任
2  運行供用者
3  中間利息控除
4  弁護士費用特約の被保険者
5  自賠責保険の支払基準の拘束性
6  運転代行と運転供用者責任
7  運転代行と他人性
8  共同運行供用者の他人性
9  無保険車傷害保険と人身傷害保険
10  政府保障事業
11  運行起因性と駐停車
12  自転車事故と被害者の保険
13  被害者と社会保険の直接請求権
14  自転車事故とTSマーク
15  一括払制度
16  任意保険への直接請求権
17  運行供用者とリース契約
18  無保険車傷害保険と胎児
19  レンタカーと運行供用者
20  自動車保険と故意免責 
21  直接請求権と損害賠償請求権
22  駐停車車両による事故
23  自賠責保険請求権の時効
24  無保険車による事故
25  自賠責保険の仮渡金
26  運転者家族限定特約
27  「すでに給付が決定し」た金額
28  搭乗者傷害保険・運行起因性

 

その他

No コンテンツ名
1  自動車運転致死傷行為処罰法について
2  改正道路交通法の施行
3  交通事故後,被害者が事故と別の原因で死亡した場合
4  交通事故後,被害者が別の事故で死亡した場合
5  一時期賠償と定期金賠償
6  弁護士費用
7  損害の概念
8  交通事故と刑事記録
9  間接損害と反射損害
10  人損と物損
11  交通事故証明書
12  植物状態と平均余命
13  消滅時効の起算点
14  保険会社の支払いと時効中断
15  交通事故と道路の設置・管理の瑕疵
16  交通事故と医療過誤
17  子が事故を起こした場合の親の責任
18  むちうちの治療
19  未成年者の自転車事故
20  除斥期間 
21  海外での治療
22  紛争処理機構に対する紛争処理申請
23  交通事故紛争処理センター
24  親の監督責任
25  大阪府自転車条例
26  大阪府内で交通事故の発生件数の多い交差点

 

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